歯とスポーツの新たな関係

歯科イラスト2.gif皆さんは「スポーツ歯学」という言葉をご存知でしょうか?

スポーツ歯学とは、簡単に言ってスポーツ医学の歯科分野です。スポーツに起因する歯科的な外傷の治療、予防などのほか、スポーツ・パフォーマンスを最大限に発揮できるよう歯科的にお手伝いをすることも含みます。さらに、歯科治療で与える薬にドーピング検査の対象となる成分を含まないように配慮したりすることもあります。これらすべてをひっくるめて「スポーツ歯学」と呼びます。

マニアックなトレーニングジムでは、時々口にマウスガードを装着して筋力トレーニングを行っているトレーニーを見かける事があります。また、ウェイトリフティングなどのパワー系競技でもマウスガードを使っている選手が存在するようです。さて、マウスガードにはどんな効果があるのでしょうか?

歯は食いしばるべき?
「大きな筋力を発揮するには歯を食いしばる必要がある。その時に歯を保護するためにマウスピースを使うのだろう。」と考える人が大半かと思います。しかし、それは必ずしも正解ではありません。スポーツや筋力トレーニングで大きな力を発揮している一流アスリートを調査してみても、多くの場合は強く歯をかみ合わせているという事が無く、中には筋力を発揮している瞬間に口を少し空けた状態であることも多いのだそうです。たとえば、プロ野球の王貞治氏は現役時代、素振りの練習でも食いしばっていたため、歯が磨り減ってぼろぼろになってしまったというエピソードが残っています。

ですが、同時期に活躍した長嶋茂雄氏などは、打つ瞬間に口を開けていたことが、残された多くの報道写真から明らかです。もっとも選手ごとに個人差もあり、人によっては歯をある程度強く噛むことで力を発揮できる場合もあるようですが、現代のスポーツ歯学においては「力を発揮する時には顎や首を含めた体の軸となる部分が適切な位置に固定される事」が重要視されています。
歯を食いしばらなくても力が発揮できるのなら、特に意識して歯を食いしばる必要は無いと考える事が出来るでしょう。
次回はマウスガードの必要性についてです。